子供の質を決めるのは遺伝(生まれ持った資質)なのでしょうか。後天的な学び(環境・教育)なのでしょうか。この問いに対しては諸説がありますが、近年では「知能は遺伝子の影響が6割、性格は3~4割が遺伝子の影響」と言われています。つまり、性格の7~6割は後天的な学びによって形成されるということになります。
子の性格の殆どは、幼少期、親が子に接する態度によって形成されます。おおよその心理学でいわれているのは、その人の人格や基本的な性格が形成されるのは、0才~3才、または6才位までの両親または養育者との関係に起因します(一説には、母親との関係が殆どを占めるともいわれます)。何故でしょうか。
生まれた子供は、何も知らない真っ白な中身です。いうなれば何もインストールされていないハードディスクが入ったパソコンです。ですから、子供は生まれたとき一番身近にいる他者(親)を通して、外界について学習していきます。
生まれたばかりの赤ん坊には「生きるか死ぬか」という生存本能しかありません。そして、人間の脳は情報を「関連付け」しながら処理していきます。外界を何も知らない子供は、自分にとって何が安全か危険なのか、自分が知っている情報と結び付けて判断するしかありません。お母さんとは違う生き物で不快な思いをすればお母さん以外の人間を嫌がりますし、大きな音で怖い思いをしたなら、大きな音を出す人や物は自分に害を与えるものだと関連付けて、避けようとします。自分は世界のことを何も知らないので、自分の知っている情報を元に判断していくしかないのです。
自分自身があまり覚えていないような未就学(~6才)の頃の自分。このとき、自分と親との関係はあまりに密接です。なぜなら、幼少期の子供たちは、親に見捨てられたら生きていけないからです。親の愛とはすなわち、食べ物を与えてもらい、身の回りの世話をしてもらい、安全な環境(住居)を用意される。それらが欠けるということは、愛情の問題にとどまらず、生命の危機につながります。ですから、子供は必死です。「親からの愛=養育を得る」ということは生存本能に根差したサバイバルの問題です。だからこそ、親との関係において刷り込まれる思考パターンは強烈で、根強いものになります。そんなわけで、幼少期の子供は親との関係を、成人した私たちが想像する範囲を大きく超えて、大きく受け止めます。
そして、子供がこの世に生まれ出て、一番最初に接する「他者」…それが親です。子供は、親との関係を通して初めて、「自分」と「自分以外の他者」との関係性を学びます。自分と他者との関係を学ぶ相手が「自分の生存を握っている相手」であり、そこで関係で学んだことをそのまま、その先の人生で自分と関わる全ての他者との関係に関連付けていくことになります。
子供は男性性と女性性のエネルギーを、親との関係で最初の基礎を学びます。そして、子供の中に培った学びは、幾重にも重なる同じような出来事で「強化」されていきます。親によって刷り込まれたあなたの「この世はこういうものだ」という学びは、祖父母、親戚、ご近所、そしてその後の学校や先生、友達といった社会、つまりあなたを取り巻く全ての環境の中で、強固なものとしてあなたの中に強烈に刷り込まれていくことになります。
ちなみに、この親から学んだ刷り込みは、今のあなたと親の関係がとても悪い場合でも変わりません。「あんな親の愛なんて要らない、こっちからお断りだから関係ない」と思っている人でも、親からの刷り込みは消えません。「今の」あなたが、自分の親に対してどういう感情を抱いていても関係がなく、あくまでも「過去の」あなたと親の関係が、今でもあなたの中に根強く残っているのです。
中には、「我が家は昔から、お互い干渉し合わない大人の関係だったから衝突なんかしなかった」という家庭もあるでしょう。「お互い干渉し合わない大人の関係」または「子供の自主性に任せる」ことが行き過ぎた環境だった場合、それは幼少期の子供にとって「放任」と同じです。親と子の距離が遠く、関わり合いが薄い関係性だった場合は、子供は成人しても、自分と人との距離において「いつもなんとなく距離がある気がする」人となります。干渉はされないけれど、かまってもらえない。ぶつかった経験がないので、どこまで我を通していいのか、どこまで人に助けてもらえるのか、どこまで相手に関わっていいのかわからないから、大人になっても遠慮がちであったり、心の奥底の本音を打ち明けられるような、深い関係を築くのが苦手になります。衝突をしないということは、衝突のさせ方も、衝突した結果関係性がどう変化していくか、そしてなにより、衝突しても変わらず愛してもらえるという信頼と安心を学ばせてくれなかったということです。親が適切に関わってくれなかったので、子供も人との関わり方を知らないまま大人になります。結局のところ、子供は親のふるまいから全てを学び、模倣した人間となるわけです。
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