身近な人を自殺で亡くしたあなたへ

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身近な人が自殺という方法を選んでしまった場合、残された家族や友人の心は嵐となります。嵐の中で、沢山の思いや言葉が頭の中を駆け巡ります。まず最初に出てくるとりわけ大きな問いは、「なぜ」です。

なぜ
どうして

なんで言ってくれなかったの

そして次に、こう考え始めます。

なぜ、気づいてあげられなかったんだろう

なぜその人が死んでしまったのか。なぜ、自死という形を選んでしまったのか。この問いに、残された方は苦しみます。

真面目にこの問いに答えるならば、「それは結局誰にもわからない」なんですよね… なぜ、その人が死を選択してしまったのか。その人の心の中にどんな想いや思考があったのか。それは、たとえ専門の精神科医でも、臨床心理士であったとしても、その人の心の中にあった「本当のこと」は、誰にもわからないんです。仮に遺書があったとしても同じです。なぜなら、その人の想いすべてが書かれているかはわからないからです。

そして、次の問い「なぜ、気づいてあげられなかったんだろう」という問いにやっぱり真面目(?)に答えるならば、ここは前回ブログで紹介した、鬱の臨床催眠で世界的権威であるヤプコ博士の言葉をお借りしたい。
博士曰く、

「自殺につながる要因はいくつかあるが、特に自殺を成し得てしまう大きな要素は、そこに「衝動性」という要素が加わった時だ」

そして、

「過去50年の研究の結果、(患者の自殺の計画性が明らかになっていなかった場合を除き)どの精神科医もセラピストも、患者の自殺を予測することは難しい。」

自殺を成功させてしまう要因の大きな一つは「衝動性」。これを聞いて、私はとても納得いきました。何故って、自分が自殺したいと思った時もまさにそれだったからです。(これについては次回に~)

自殺を考えている人の絶望や悲しみ、苦しみが、その人の人生の中でどのくらいの割合、どのくらいの深さを呈しているかはわかりません。例えばそれがマグニチュード1程度でずっと続く人もいる。3~5が時々発生する人もいるし、5がずっと続く人もいる。常に7くらいの人もいるわけです。でも、ずっと7だった人を差し置いて、1程度だった人に何かとてつもなく大きな衝動となる出来事が発生したとき、1だった人が7を振り切って死に飛び込んでしまうこともあるわけです。その衝動性がいつ、どのようにして発生するか、これも「誰にもわからない」ことなんです。だから、そういう意味では結局、自殺してしまう予兆は残念ながら「誰にもわからない」のです。

そして、残された人が最も、長く、深く苦しむ言葉。

もっと話をきいてあげればよかった
もっと力になってあげればよかった
私がもっと〇〇してあげれば、結果は変わったかもしれない
私のせいだろうか

この仕事をしていて、残された方のこんな苦しい、絞り出すような想いを伺うことは時折あります。
そんな時、もし、亡くなった方が成人している方だった場合、私は残された方に必ず、こう断言します。

それはあなたのせいではないです。

誰かが自ら死を選んだ、という結果は、周りの人のせいではない。なぜなら、亡くなった人にどんな理由が、どんな事情があったとしても、最終的には一人の成人した大人が選んだ行為は本人の責任範疇だからです。何を考え、何を決断し、何を選んだのか。例えそれが、追い詰められて偏っていた狭い視界の中で堂々巡りをした末の、色々な意味で残念だった選択だったとしても大人の一人の人間が自分で決めたことは、その本人の責任なんです。誰のせいでもない。

これは、自死を選んだ方に対して厳しいことを言っているかもしれません。こういったデリケートな事柄に対して、もしかしたら炎上案件になる発言なのかもしれません。それでも、私は残されて苦しんでいる方には、声を大にして何度でも繰り返し、断言します。私は自分が本気で自殺を望み、うっかり実行してしまいそうだった経験があるからこそ、残された方に伝えたい。あなたのせいではないのだ、と。

そして、残された方に、自分を責めたり過去を後悔する代わりに是非やっていただきたいと思うことがあります。それは、亡くなった方との楽しかった記憶を思い出してほしいということ。
ヤプコ博士の秀逸な言葉を借りるとするならば「その方がどのように亡くなったのかではなく、どのように生きたかを覚えていて欲しい」ということです。

その人が好きだったもの、愛したもの、大切にしていたもの。思い出すとつい笑ってしまうような可笑しかった出来事。ほんの一瞬、ほんの二言三言でもよいのです。故人と心を通いわせたと思えたあのときの出来事… そんなキラキラと輝く思い出こそが、あなたと故人がこの人生でめぐり合った証であり、神様がお互いに与えてくれた奇跡のはずだからです。

故人が亡くなって、3年、5年、10年も経てば、あなたの生活の日々の中でその人との記憶はさほど前面にはでてこなくなるでしょう。でもそれでよいのです。忘れてしまったわけでもなく、薄れてしまったわけでもありません。その人はあなたの心の奥底で、元気だったころの輝いた姿のままで眠っていて、あなたと故人が関わりあった沢山の体験が、今のあなたを作り上げ、礎となって内側からあなたを支えてくれているからです。

 

追記:この話は亡くなった方が「成人した大人だった場合」に限って書いています。なぜなら、未成年のお子様を亡くされた方に対しては、このブログのように誰かが一方的に発言する場所で論じるべきではないと思うからです。私が発言するよりも必要なことは、残され苦しんでいる方の声を先に聴かせていただくことだと思うからです。

また、自殺に限らず、身近な人を亡くす、という体験についても過去ブログに書きました。良かったらこちらもどうぞ
過去ブログ「神様、もう一度だけ

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